僕の頭の中の『紳助劇場』

時事ネタ
09 /04 2011
 島田紳助引退。

 「どうせ2~3年経ったら政治に打って出て京都都知事かなんかになっちゃうんでしょ!」

 延髄反射でそんな風に考えて、分かったような気になったのは自分だけではないはずだ。
 とてもありそうな話だがそれだけに分かった気にならず、彼に限っては政治家になることはほぼ100%ないという主張をしたいと思うんだ。

 何故なら彼は日本で唯一、漫画に出てくる『あの登場人物』を地でいけそうな人物なのだから・・・。


 「ダウンタウンを見て漫才では敵わないと思った、だから漫才引退を決意した。」
 「司会者業界では、笑いの爆発力はさんまに敵わない、愛嬌やいい人オーラでは他の司会者に及ばない。どうする?自分が出来ること、自分しか出来ない事はなにか・・・?」

 彼のトークで何度か聞いたことがあるこの論理展開。

「Aさんはこうしている。Bさんはこういうやり方。自分は違う。じゃあ自分はどうしよう」

 マネジメント用語の3Cでいう「Competitor(競合)」の状況分析を彼はよく口にする。
 その分析の結果、捻りだしたのが独特の「紳助劇場」と名付けたくなるような「バラエティー番組の物語化」だったと思う。

 例えばこうだ。

「無人島へ行って何々出来るまで帰ってきちゃダメ!」というバラエティーでは珍しくない無理難題企画を進めるとする。
 普通ならひどい目にあう芸人を笑ってるうちに意外な感動が立ち上がってきて・・という作りのはず。

 ところが彼は
 「芸人として崖っぷちにいる**は頑張らなあかん。最後のチャンスや。これからの人生が今、ここの頑張りですべて決まる」
 と、初っ端からそれを芸人人生の勝負どころという視点で紹介してしまう。

 実際その通りだったとしてもそこは黙っておくのが花のはず。
 しかし、司会者として彼が見せようとしてるのは笑いじゃないのだ。
 彼が見せようとしてるのは、熱い涙の物語なのだ。

 それは前述のように常に他人と比較しながら数年後を想定することで自分を追い込む人生を送ってきた、そんな彼の共感できる物語。

 語り部である彼はまず、かつての自分と同じ補助線を他人の人生の上に引く。

「Aには敵わない。自分はBよりも下だ。ならどうする?五年後十年後の自分はどうしていたい?その為に君は今何をしなければいけない?」

 そしてその他人に同化し、叱咤し、激励する。這い上がろうと足掻く人間のドラマに涙する。語りながらよく泣いてるのは自分で自分の泣きのツボを突いちゃってるせいだと思う。
 
 そうして山を登り続けついにてっぺんに足を踏み入れた男が、やけにあっさりと山を下りた。自分では崖から落ちたと言いながら。

 「山を下りるまでが登山。てっぺんで終わったらそれは遭難。だから頂上まで行ったら降りてこなきゃいけない」

 彼がマラソンを終えた徳光和夫にこの言葉をかけた生番組を僕は見た。
 徳光さんはいい降り方をしてる、羨ましいとも言ってた記憶がある。
 この発言をしながら、彼はこんな風に考えていなかっただろうか。

「どうやって降りていく?自分はこの人のように皆から愛されながら降りていけるのか? 
 自分は違う。そもそも登ろう登らなければと必死で生きてきた自分が、降りていくという刺激を減らす行為にモチベーションを維持できるのか?」

 そこへすぐさま今回の騒動が来た。
 ここでもし引退でなく謹慎を選び、例えば一年後復帰したとしても待っているのは降りていく行為だ。
 もう一度一から出直すと言葉では言えても、果たして既に登った山に興味が持てるか?
 
 なら政治という別の山に登るのでは、という冒頭での予想。

 僕がないと思う最大の理由は、彼にとって選挙で勝つ事はもはや登山でもなんでもないからだ。
 時期さえ間違わなければ確実に当選するし、出るなら首長選挙だろうからいきなりてっぺんだ。真のてっぺんのはずの内閣総理大臣は今はもう一政党の一時的な代表でしかないし、なっても絶対楽しくないだろうし。
 ただ、地方政治レベルで「これをやりたい」という政策が彼にあるなら、その実行の手段としてなる可能性はゼロではないと思う。
 ゼロではないが、彼の基本戦略である競合分析から言うと、既に芸人→政治家はいるので生き方として二番煎じはしたくないと思う。
 そこにあえて自分の名を連ねようとは思わないだろう。

 ・・・・では、人にやらせてはどうか?

 今こそサラリーマン金太郎の本宮ひろ志の絵で想像して欲しい。

 ここに一人のヤンキーが紆余曲折を経て大実業家になるまでを描いた「てっぺん獲ったる!」というタイトルの漫画があるとしよう。実際にはない。
 物語のクライマックス、ついにてっぺんを獲った主人公は、暴力団との関係を暴露され進退を問われ引退・・・!!
 
 そして二〇年後・・・・。
 彼は財界の風雲児として一時代作った後、とある島にある村で村長をやったりしてる。なんか独自の経済システムの。

 で、次の選挙で勝負賭けようって橋本知事似の政治家がSPを二〇人くらい連れて来て「日本の為に力を貸して下さい!」って土下座した。

 すっかり白髪頭の島田村長は腕組みして「知らん」の一点張り。

 しかし、食い下がる政治家の横にいる秘書らしき美人の女が突然とんでもないことを気負わず微笑んで言うんだ。

 「いつまでカッコつけてんだ、じじい」

 「なにい・・・?」

 女の目はひるまず挑まず。射られるようでもあり吸い込まれるようでもあり。
 永遠とも数秒ともとれる時が経った後、そのただまっすぐな澄んだ瞳を見つめていた島田村長は静かに問うんだ。

 「私は十年もすれば死ぬでしょう。貴女は十年後もその目でいられますか?」

 彼女は、

 「一緒に来てくださるなら」

 とてもいい声でそう言うと少し目尻を下げた。

 島田村長は立ち上がって言うんだよね。

 「その目、信じよか・・・」

 これ、二〇三〇年くらいの出来事だな。

 よく漫画で「いい目をしてる」って理由で主人公を信じる人物がいるけど、現実にあんな人いないでしょ?でも、島田紳助はあれになれる人なんだよ。

 真顔で『その目を信じる』なんて言って納得感のある男は、彼しかいない。

 他の誰で想像してもウソ臭い。こっちが照れちゃう。

 でも、島田爺さんなら本気で言ってくれる。カッコいい。説得力がある。

 そう。島田紳助はこの現実の日本についに現れた最初の「澄んだ瞳を信じてくれる影の実力者」になれる男なんだよ!

 というわけで、島田紳助本人は政治家にならない!と再び主張したい。黒幕にはなる!いい意味での黒幕!

 ちなみにこの女秘書が島田爺さんの後ろ盾を得て初の女性総理大臣になるまでが「てっぺん獲ったる!2」のストーリーなんだけど、まあ皆さんそろそろ呆れてきてますよね。

 すいませんでした。





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オカモト國ヒコ

大阪で演劇やラジオドラマやTVドラマの脚本を書いています。

「テノヒラサイズの人生大車輪」(作・演出)第22回池袋演劇祭優秀賞。
FMシアター「薔薇のある家」(脚本)平成22年度文化庁芸術祭優秀賞、第48回ギャラクシー賞ラジオ部門優秀賞。
特集ドラマ「橋爪功一人芝居 おとこのはなし」(脚本)第50回ギャラクシー賞ラジオ部門優秀賞。
関西TV「誰も知らないJ学園」「新ミナミの帝王~裏切りの実印」
NHK-BSプレミアム「高橋留美子劇場」「猿飛三世」(5、6話)
Eテレ「昔話法廷 第2シーズン」